Whenever BizCHINA 取材レポート
上海の南西、高速鉄道で25分ほどの距離に、他地域からの観光客の過半数をリピーターが占める水郷古鎮がある。古都・嘉興市の中心部にある月河歴史街区だ。観光客でごった返す多くの水郷とは異なり、程よいにぎわいの中で、ゆったりした時間が流れているのが特徴。2008年に大規模な景観保全事業がおこなわれて10年経つが、その成果が現れているといえる。

↑ 水路に沿って昔の家屋が残る月河歴史街区
■4億元で景観保全事業
嘉興市は隋の時代から北京と杭州を結び、交通と物流、要人輸送に活用されてきた全長1794kmの京杭大運河(世界遺産にも認定されている)の脇に広がる古都のひとつで、旧市街地中心部にある南湖はたびたび歴史上の重要イベントの舞台にもなってきた。常住人口は451万人。
月河歴史街区は南湖の北に位置し、京杭大運河から枝分かれした運河のほとりに立地している。伝統家屋が並び立つ往古の商工業地区で、08年には嘉興市政府によって4億元を投じた景観保全事業が実施され、総面積9万㎡にわたって伝統建築様式の民家の修繕、河岸の整備、重点文物保護単位や公園、史所旧跡の保全がおこなわれた。

↑ メインストリートも人で混み合うことがなく、ゆっくり散策を楽しめる

↑ 古風な街路が水辺に沿ってつづく
■4回以上リピーターが3割強
景観保全事業から10年を迎える2017年4月に嘉興市政府が発表した旅客動向調査レポートによると、同歴史地区を訪れる旅行者のうち地元客は57.61%、他地域からの客は42.39%の内訳となっている。旅行者全体の47.62%が観光レジャーを目的としており、とりわけ旧跡や民俗、伝統建築が連なる街並み、文化芸術に強い関心を抱いている。他地域からの旅行者の47.7%が宿泊を伴わない日帰りなどの観光客で、同じく47.25%は1人当たり消費額が200元以下となっている。
同レポートについて地元メディアの南湖新聞が詳報した記事によると、他地域からの旅行者のうち初めての来訪者は44.69%、それに対し21.98%が2回目または3回目の旅行者で、4回以上の来訪者が全体の33.33%を占めていた。合計すれば、他地域客のうち55.31%がリピーターということになる。

↑ かつての要人の宿泊施設を転用した民間宿泊施設「水驛原宿」(客室のひとつ)

↑ 2階の客室からは、閑静な水郷が一望できる
■閑静だが閑散ではない
実際に訪れてみると、縦横に流れる水路沿いに古い家屋が並び、地場伝統産業の工房や商店、飲食店、博物館などが営まれている光景は多くの水郷古鎮と共通するが、観光客は多すぎず少なすぎずで、比較的静かで余裕のある空間の中をのんびりと散策することができ、4回以上訪れているリピーター客が多いことも納得だった。

↑ 嘉興の名物ちまき。古鎮の店頭でも出来立て熱々が提供されている。近所には、ちまき博物館も
参考資料:南湖新聞網2017年5月4日付記事、嘉興市政府17年4月24日付発表、中国経済網08年6月26日付記事など



