梅雨入りですね。(※編集部注 執筆時点は6月)
時折の涼しさを残しつつ、確実に湿度は夏の本性を表し始めました。
今年も猛暑なのかな。
数年前に「夏は百回来ない」という言葉を聞いて以来、子どもの頃のように、夏を想い出深いものにしようと思ったのです。
しかし、毎年の猛暑に「夏は百回も要らない」と弱音を吐き、途中からクーラーの中でユルく過ごしてしまっておりました。今年こそ…。
さて今回のコラムは、哲学について少々。
■哲学は「言葉の解像度」を高める
マネジメントにおける哲学の必要性を語ると、時に「抽象的すぎる」と敬遠されることがある。
しかし、経営に携わる者が直面するのは、決して単純ではない複雑な人間関係、意思決定、そして価値判断である。そうした領域において、言葉を粗雑に扱うことは、誤解や信頼喪失、そして組織の方向性の迷走を招く。ゆえに、「言葉の解像度を高める力」としての哲学的思考が必要だと私は考える。
哲学は、当たり前の事や道理そのもの、例えば「存在とは何か」「公平とは」「働くとは」といった、最も根源的な問いに向き合う学問である。
そしてこれらの問いを通じて、私たちは言葉の背後にある意味や含意を掘り下げ、単なるスローガンに陥りがちな理念を、行動指針へと転化させる力を獲得する。
たとえば、「利他主義」とは単に他人のために尽くすことではなく、「誰にとっての利益か」「なぜそれが価値ある行動か」といった再定義が求められる。
これが解像度の高い言葉の使い方である。
言葉の解像度が低いマネジメントは、目標管理においても評価制度においても「分かったつもり」での合意を生む。
そして、曖昧な目標、主観的な評価、行動の乖離を誘発する。
次に示す違いを、答えられるだろうか
・「モチベーション」と「意欲」の違い
・「結果」と「成果」の違い
・「頑張る」と「努力」の違い
こうした言葉の違いを曖昧にしたまま、モチベーションを高めよう!とか、頑張った事を評価しよう!という言葉を使う事が、組織力を弱めている事に気が付いてほしい。
反対に、哲学的な問いを介して言葉の意味を丁寧に構築し直すマネージャーは、組織における共通理解の基盤を築くことができ、延いては「合意されたビジョン」に基づく強い組織をもつくることができる。
「言葉」は、行動の前提であり、文化の土壌であり、未来の約束である。
だからこそ、解像度の高い言葉を扱う技術としての哲学が、マネジメントには不可欠なのだ。
■哲学は「抽象度を高める」思考技術
ビジネスの現場で起こる問題は、しばしば現象としては似通っていても、その根本原因や背景はまったく異なることがある。
こうした複雑性に対応するには、個別事象に引きずられずに全体の構造を見抜く「抽象度の高い視点」が必要になる。そしてその視点を支えるのが、まさに哲学である。
抽象とは「曖昧にすること」ではない。それは「共通項を抜き出すこと」であり、「構造を明らかにすること」だ。
たとえば、若手社員の離職が続いているという現象に対して、「最近の若者は我慢が足りない」「根性がない」といったステレオタイプ的なコメントで片付けるのではなく、「組織が提供しているキャリアの意味が、個人の人生観と乖離しているのではないか」「上司との対話の質や頻度が、期待とギャップを埋めるだけのレベルに達していないのではないか」といった視点で捉えられるかどうか。
これが、抽象度を高めた思考の出発点だ。
哲学の訓練は、具体的な事象や、関連、時には常識から一歩距離をとり、「それは何を前提に成立しているのか」「逆の立場から見ればどうか」といった多面的な視座を与えてくれる。
これは、リーダーが対立の根本にある価値観の違いや、チームの不協和音の構造を解明する際にも大いに役立つ。
組織内に蓄積する「見えない問題」の多くは、言語化されないまま感情や不満として表面化する。
哲学的思考は、そうした「言葉になる前の違和感」に形を与え、次なる一手を導く鍵となる。
抽象度の高い思考はまた、未来志向の構想にも不可欠である。
経営理念やビジョンといった抽象的存在を、日々の判断に落とし込むには、「なぜそれを目指すのか」「それはどのような価値につながるのか」という問いを繰り返す必要がある。
これはまさに哲学の営みであり、正解なき未来に対して一貫性を保つための“コンパス”となる。
哲学とは、遠くにある思索ではなく、目の前の現実を深く読み解くための「焦点の変え方」である。だからこそ、経営と組織を導くリーダーは、言葉の解像度と抽象度の両面を備えた思考力を育てるべきなのだ。
哲学的思考は、マネジメントの枠を超え、自身の人生をより深く、豊かに彩る力を持っています。その思索の旅が、あなたの人生をさらに充実させ、明るい未来へと導いてくれるでしょう。
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