中国語で「怪談」はどう言うのだろう。そのまま”怪談”guàitánでは「奇っ怪な話」というぐらいの意味になってしまう。”恐怖故事”kǒngbù gùshiとでもしておこう。私はホラー映画は苦手である。だからあまり見ない。中国の怪談話もあまり聞かないようにしている。それでも最近は日本のホラー映画の影響も受けてか、これまでとはひと味違った「恐怖」を感じさせるものが出てきた。
(怪談1)
ある男、家族と一緒に旅行に行き、妻が山の頂から足を滑らせて落ちてしまった。その後、男は若くてキレイな女性と再婚し、翌年には可愛い娘が生まれた。彼はいつも娘を山に行かせないようにしていたが、娘が10 歳の時に、家族みんなで初めて山登りへ出かけた。娘が楽しそうに山の頂へ向かって走りだしたので、彼はあわてて娘を抱きかかえて止めた。すると娘は振り向いて彼に笑いながら言った。「お父さん、もう2 度と私を山から突き落とさないでね!」
ああ、恐い。しかし、この恐さはどこか日本的である。次も似ている。殺されるのはいつも妻である。
よく喧嘩をする夫婦、ある時また喧嘩の末、夫はカッとなって妻を殺害してしまい、その死体を家の裏庭に埋めた。何日か経ったが、不思議なことに、子どもは母親がいないのに何も聞いてこない。そこである日男は子どもに聞いた。「最近お母さんが家にいないのに、どうして平気なんだ?」子どもは答えた。「僕もおかしいと思っているんだ。お父さんはここ数日、どうしてずっとお母さんを背負っているの?」
恐いなあ。男の背後からうらめしそうな女の顔が立ちのぼる。
次回に続く


