量子通信システムの開発メーカー安徽問天量子科技は、7月25・26両日に安徽省蕪湖市で開かれた中国暗号学会において、量子情報産業における人材育成に向けて、教育プラットフォームを発表した。仮想現実を用いた実験プログラムなどから構成されている。
量子通信は、光の粒子である光子を用いた暗号通信。外部から観測された瞬間に変質する量子力学の特性を用いることで、原理的に傍受も解読も不可能な暗号通信を可能とする。中国は2017年8月に人工衛星を用いた長距離量子通信に世界で初めて成功（※）するなど、この分野で世界をリードしている。
今回の教育プラットフォームは、中国科学技術大学から委託を受けて産学共同で開発したもの。
たとえば量子光学実験室Qlabは、光子源や光子検出器などの実験環境を仮想空間で実物大に再現したもの。実物の光子源や検出器は非常に高額な上に壊れやすく、実験環境は厳しい条件を満たす必要があり、しかも光子を可視化する手段はないため教育には不向き。仮想現実で再現することで、光子を可視化して学習することも可能になる。
また、暗号化された通信内容を解読するための「暗号キー」の原理を学習するためのソフトQsim、量子暗号技術を研究するためのプラットフォームQCRPなど各種教材を備えているほか、将来的には産学連携による教育機関の建設も計画している。
※米国CNBCの2017年8月10日付記事
↑プラットフォームを構成する教育システムのひとつQlab。仮想空間に実物大の実験環境を構成し、量子暗号の原理を学習する（安徽問天量子科技のニュース・リリースより）
