CO2削減へ電気で排ガス処理
子どもたちが、自然の中で遊べる地球を届けたい
1978年の創業以来、日本でトップクラスの実績を誇る排ガス処理装置開発メーカーのカンケンテクノは、96年に中国へ進出。環境規制の進展に伴い今では大陸部12カ所に拠点を構え、大気の改善に貢献を続けている。現在の取り組みや業界状況、中国ビジネスにおけるアドバイスまで、北京カンケンテクノの入江房義総経理と、平湖カンケンテクノの川﨑裕幸総経理兼工場長に、話を伺った。

ー排ガス処理装置を開発製造されています。納入先はどういった工場になりますか。
入江:ディスプレイ、塗料、半導体の3つですね。ディスプレイは、96年に主要取引先の日本のブラウン管メーカーが中国へ進出するのに合わせて、我々も中国に進出するきっかけとなりました。また塗料については、もしかしたら印刷物などを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、車の塗装など多くの業種で塗装工程があり、排ガス処理が必要になります。半導体は近年成長著しい業界ですが、メーカーが乱立して淘汰されていくといったことが起こりがちですので、取引先の実力を見極める目は必要ですね。
ー中国での環境意識の高まりは。
入江:規制も厳しくなっていますし、当事者の意識も高まってきています。国全体として日本以上に厳しい基準を設けているほか、地域によってさらに基準があるので、きめ細かな対策が欠かせません。
川﨑:各地の開発区も安全性にこだわり始めています。企業誘致上のイメージ戦略もあり、排気、排水、廃棄物や作業環境の安全性など、個々の分野で対策が要求されるようになってきています。環境保護当局の発言力も高まっていますし、企業も当局と連携した対策に積極的になっています。

入江房義 氏
北京カンケンテクノ総経理
いりえ・ふさよし●2000年3月同志社大学大学院工学研究科修了、同年カンケンテクノ入社。大分出張所長、国内営業3課長、品質保証部長、テクニカルサービス部長などを経て、2014年11月から日本国内および中国対応。2019年から北京カンケンテクノ総経理。
ー業界の競争相手は。
入江:中国の地場企業と、韓国勢との競争が激化しています。中国勢は価格が安いですし、韓国勢は半導体メーカーに対しては、サムスンとの実績が看板になっていますね。当社は技術力を武器に顧客需要に合わせたカスタマイズ製品を強みにしてきましたが、彼らは量産型製品を主に扱っており、単純に価格で比較されると苦戦します。また大容量の排ガス処理技術が必要な大型設備は我々に利がありますが、絶対数が少ないため、市場環境の厳しさにつながっています。
川﨑:そういった現状を受けてここ数年、量産量販向けのスタンダード品として、ユニット式の小型装置の開発・製造・販売に力を入れています。排ガスの量に応じて台数の増減が可能で、ユーザーは予算面でも工場スペースの活用面でも、より効率的に装置の導入・運用が可能です。
ー近年、SDGs、脱炭素といったワードが話題です。
入江:当社の技術的利点として、ヒーター式での長年のノウハウがあります。排ガス処理には熱処理工程があるのですが、CO2を大量に発生させる化石燃料ではなく、電気で熱を発生しています。また消費電力自体の省エネ化にも注力しています。発電所の再生可能エネルギーへのシフトとともに、相乗効果でCO2が削減されていくでしょう。
川﨑:高温を発生させ、それをコントロールする高度な技術が求められます。また一般的な薬剤洗浄方式の装置では2次汚染物質が発生し、別途排水処理が必要になるのですが、当社製品は特殊触媒などを用いた方式で、2次汚染物質が発生しない仕組みです。

川﨑裕幸 氏
平湖カンケンテクノ総経理兼工場長
かわさき・ひろゆき●1996年大阪電気通信大学卒、同年カンケンテクノ入社。関東、三重出張所長、物流購買部長などを経て、2018年から工場長として中国赴任。2020年から平湖カンケンテクノ総経理兼工場長。
ー現在の体制と今後の展望は。
入江:日本では長岡、大東など、中華圏では台南、平湖に生産工場があります。
川﨑:平湖で作った部品を日本で組み立てたりと、それぞれに融通を利かせて活用しています。平湖には、スタッフに装置の操作やメンテナンスを訓練する、トレーニングセンターも設けています。
入江:オーダーが来てから生産という形だけだと、稼働率が低くなってしまうため、量産品をさらに安定して販売・供給できるようにしたいです。メンテナンス向けの拠点を含めると大陸部に12カ所あり、特にディスプレイ工場は処理するガス量が多く、24時間体制のサポートが求められるため、1日3交代制を敷いています。今後はこういったアフターフォローも重要な収益源になるでしょう。
ー中国で25年間事業をされています。これから中国進出・事業拡大を考えている日系企業へアドバイスを。
入江:市場の大きさは魅力ですが、社外的には競争の激しさ・変化の速さ、社内的には人材の確保・育成が難所となるでしょう。後者に関しては、当社でもマネージャーが務まるローカル人材の育成が課題ですが、個々人の利益を追求する傾向が強いため、会社全体の利益や、ビジネス情勢にアンテナを張って自ら考えられる人材はなかなか難しい。まずはトップが毅然とした態度で、社員に求めていることを明確にし、信賞必罰をしっかり実行することが肝要です。日本人的な曖昧さは禁物で、通訳や人事課長同席でフェイス・トゥ・フェイスではっきり話をする。そのイエス、ノーがはっきり言えないようであれば直接進出することはやめ、商社や代理店を活用すべきと思います。
川﨑:デジタルの活用やスピードの速さなど、逆に「日本は大丈夫なのか」と心配になるほどですが、事業を展開するとなると若い人の離職率の高さは覚悟しておく必要があるでしょうね。
入江:その上で、中国の文化を理解し、「紅包」などで社員を適宜労わる目配りがあるといいのではないでしょうか。
ー最後にWhenever読者にメッセージを。
入江:私が小さい頃のように、また川や公園で自然と触れ合って遊べるような環境作りに貢献できるよう、頑張っていきます。
川﨑:大気を守る一員として、我々の子ども、孫…と未来の世代が安心して暮らせる地球を届けられる存在でいたいですね。
北京康肯環保設備
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