
ビジネスマンが日々の業務で避けて通れないのが契約や決済、承認などの書類仕事。手続き上必要ではあるが、もっと本質的な部分に時間を使いたいというのが本音だろう。そこで昨今ではこれらの流れを電子化する動きが出てきており、スマートフォンで署名、送信が完了する便利さは、一度体験すると戻れない感覚だ。
おなじみの日系コンビニ、ローソンがここ中国で電子契約・署名システムを導入するにあたり選んだのが、日本でも高い実績を誇るウイングアーク。関係者に話を聞いた。





中国大陸部で約5000店舗ものコンビニエンスストアを展開するローソンが、ソフトウェア開発・販売のウイングアーク上海と組み、電子契約・署名システムの導入を進めている。現在は月末に3日間をかけて印刷、サイン、郵送作業を行っている数千店舗、10万件規模の月次報告資料が電子化され、運用スピードの大幅な向上はもちろん、1文書あたり約20元と見込まれるコストも半分以下まで大幅圧縮できる見通しだ。これらの取り組み、電子契約・署名市場の現状などについて、ローソン中国の糟谷俊文IT総部総経理、王麗君高級経理、ウイングアーク上海の大金直樹董事総経理、朱磊副総経理が語ってくれた。
ー電子契約・署名の導入を考え始めたきっかけは?
糟谷氏:ローソン中国は、中国全土のローソン店舗のシステムを管理しています。業務の中で様々な書類が存在しており、事業拡大に伴い書類も膨大になってきています。例えば、スーパーバイザーが毎月、店舗オーナーと運営方針などについて打ち合わせをしています。その際には関連書類を持参しサインを交わすといった作業も続けています。
以前より、書類の電子化についての要望はあり、なかなか手がついていない状態でしたが、昨今のコロナ禍において、リモートで報告・相談などの交流をする下地もでき、また要望も強くなってきていました。昨年度から華南地区への進出を果たしました。毎年1000店舗ペースで事業が拡大していく現状を考えた時に、大量文書とその処理にかかる労力、時間をどうにかするというのは避けて通れない命題だったと思います。
糟谷氏:電子化により、情報の提供スピードが速くなります。そして紙の印刷・郵送にかかっていた物理コスト、時間コストなどが圧縮でき、導入にあたっての投資金は短期間で回収できる見込みです。
大金氏:中国市場では、「上上签」「e 签宝」などの“4強” が全体のシェア75%以上を占めています。それぞれ、金融業界だったり政府機関だったりと得意分野はありますが、過度の価格競争で赤字となっているのが現状ですね。我々は価格でなくクオリティを武器に前進していきたいです。

ー競争が激しそうですが、ウイングアークの強み、またローソンがウイングアークを選ばれた理由は
朱氏:法的に有効な電子契約・署名には当局から認可を受けた認証機関との協業が必要ですが、我々のパートナーの「上海市数字証書認証中心」(上海CA)は電子証明書発行のリーディングカンパニーで、信頼性とネームバリューの点で他社との差別化となっています。
糟谷氏:これまでのお取引を通じての技術への信頼であり、我々が必要としている業務への親和性が大きいです。本案件とは直接関連はありませんが、2017年にウイングアークさんのデータベースエンジン「Dr.Sum」と、統計・分析ツール「MotionBoard」を導入し、それまで地域ごとの事業会社が個別にデータをダウンロードし表計算ソフトなどで独自に行っていた経営戦略を、統一した店舗運営ノウハウとして提供できる仕組みを整えました。「Dr.Sum」は1日のべ16億トランザクションを処理しながら、我々の事業が拡大する中でもこれまで安定して稼働しています。
また、今回利用する「invoiceAgentDocuments」(以下iAD)は、ローソン各店舗から閲覧できるマニュアルなどに利用されています。今回取り組む書類の中には機密性の高いものもあり、電子ファイル自体を認証先へ預けるのは心配になりますが、ウイングアークさんとの取り組みにより書類データは自社データセンター環境内にある「iAD」へ置いたまま、認証ライセンスだけを埋め込み、書類への署名ができることが、非常に大きな利点だと思っています。
大金氏:電子契約・署名だけでなく、その前段階の帳票作成・データ処理・管理・運用から機密性を確保しつつ一括してソリューションを提供できるのは、弊社ならではだと思います。

ーローソン中国として、今後さらにDXを進めていきたい領域は
糟谷氏:業務プロセスは日々変化していますが、総務などのバックオフィス系はまだ処理が多いですので、自動化したいですね。
王女史:そうですね。印鑑にはいろいろな種類もあり、実は現在、社内印鑑も電子化にすることを検討していて、電子印鑑付きのドキュメントをオンラインで一元管理することを実現したいです。もしできるなら、いいですね。
朱氏:法的な有効性を求めると認証ライセンスの埋め込みが必要になりますが、社内処理のための認印といった扱いであれば、そこは不要になるので、コスト的にも導入しやすいと思います。
ー自動化や電子化に興味はあるけれど、知識がなくてよくわからない、何から手をつけていいかわからないといった企業担当者へアドバイスを
朱氏:電子契約という点で言えば、まずは雇用契約あたりから導入しては。日々の業務運用に関わる部分ではないので、現場の抵抗感も低いのではないでしょうか。
大金氏:むしろそういった方々を歓迎しており、トライアル版や「3万元から始めるDX」と銘打ったプランなども用意しています。一度お問い合わせいただければ、要件をヒアリングして、予算と現状に合わせて提案させてもらいます。
中国では特に製造業界に携わる機会が多く、工場などの現場でどんなデータ管理・運用が求められているのかなど、我々も学ばせていただきました。中国ならではのニーズとして、工場内のフローを3D描写し、どこで何が起こっているのかを可視化する仕組みも弊社が独自に開発し、活用いただいております。
小売りについてもローソン中国さんから沢山学ばせていただいています。「導入して良かった。ありがとう」という声を励みに、皆さんとともに成長していきたいです。
[ローソン中国 罗森(中国)投資有限公司]
住所:上海市黄浦区淮海中路283号香港広場2703-08室
電話:021-6323-5089
URL:www.chinalawson.com.cn
[ウイングアーク上海 文雅科信息技术(上海)有限公司]
住所:上海市徐匯区漕宝路33号徐匯日月光中心D棟707室
電話:021-3419-7890、021-3419-7890(李 日本語可)
メール:info@wingarc.cn
URL:www.wingarc.com.cn
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