生産工程を自動で可視化
現場改善でグループ世界一位を目指す
2007年に南通にて開業した住友ベークライト南通工場は、様々な樹脂素材を自動車、自動車部品メーカー等をはじめとする多くの企業に供給している。同社では、2019年よりウイングアーク1st社のソフト「MotionBoard」を導入して、AI、IoTによる工程監視の高度化を目指してきた。これまでの歩み、今後の目標などについて関係者に話を聞いた。
南通住友電木有限公司
董事・総経理 藤村宜久氏
副総経理・PM工場長 大久保等氏
副総経理・PR／ECR工場長 眞鳥純氏
副総経理・多層薄膜工場長 佐々木研太氏
ー南通住友ベークライトとウイングアーク上海の関わりについて教えてください。
藤村氏：弊社は、2007年6月に住友ベークライト100％独資のフェノール生産工場として南通経済技術開発区に設立し、その後徐々に生産ラインを拡張、現在はフェノール樹脂、フェノール樹脂成型材料、液状エポキシ剤、フィルムシートの生産を行っています。
この間、中国はカーボンニュートラル対策を推奨し、安全・環境規制をますます厳しくしていますので、弊社もエネルギー利用の高効率化を推し進め、最新の環境装置を採用することに努めてまいりました。この取り組みをさらに強化していくうえで、弊社はAI、 IoTによる工程監視を高度化することの重要性を認識してきましたので、この分野においてとても実績のあるウイングアークさんのサポートサービスを利用させていただいております。
弊社は、2019年にウイングアーク1st社の「MotionBoard」を導入いたしました。工場の安全操業のために生産過程を“見える化”することが最初の取組みでした。事前に設定した数値（例えば、排気ガス、温度、電圧・電流など）に異常値がでたら、自動的にアラームが出る常時監視を実現いたしました。本日は、4つの生産ラインの工場長も参加し、弊社のDXについての取組みをお話しさせていただきます。
大久保氏：導入いたしました「MotionBoard」はとても操作性がよく、ビジュアル機能も優れています。現場の人たちが見やすい、わかりやすいように、表・アイコン等を利用して可視化できるところがとても良いと思います。また、関係者と情報を共有できるので、問題の認識、原因分析、解決、行動を起こしやすいと思います。ソフトウェアを導入しただけでは、スタッフの全員がすぐに利用できるようになるわけではないので、勉強会を定期的に開催し、利用するとこんな良いことがあるということを伝えていきました。お蔭様で、現在は、「MotionBoard」を効果的に利用する人が増えてきました。
最初は、いままでの仕事のやり方に慣れているので、それを変えたくないと思う人もいますし、仕事が効率化すると、自分の職がなくなるのではという風に心配する人もでてきます。DXを進めていくためには、まず、人の意識を変えることが大事だと思います。大きな意味では、人材育成カリキュラムや組織変更まで将来的には必要になるのではと感じております。
眞鳥氏：私の経験でも、工場の全体を巻き込んでいくためには、一つ一つ積み上げていくことが大切と感じております。工員の皆さんが「上手く行った」という成功体験を共有していくと、おのずと信頼感が生まれ積極的に取り組んでもらえると思います。
さらに、データ分析が全社的に即時できるようになりますので、生産効率や品質管理に対して良い効果がもたらせると思いますね。メンテナンスの時期、部品交換の時期、設備改修の時期についての最適解が出せるようになりますし、原料についての改善要求などもデータを持って示せますから、説得力が増すと思います。
ーデータの可視化、即時性のメリットが大きいようですね。
佐々木氏：従来の弊社ERP基幹システムでは、多くのデータ出力は月次で行われていました。「MotionBoard」導入後は、データの更新が都度行われるし、スピーディーに必要なデータがとれます。さらに、見える化ができることにより、様々な分析が即座に行われるようになりました。スピーディーな可視化、分析が可能となったので、生産に関わる様々な不具合の原因のつきとめもやり易くなりました。原因がわかればおのずと、解決策も見えてきます。
大久保氏：「MotionBoard」導入により相当に生産工程の可視化が進み、利用社員も増加してきました。弊社のDXも次の段階に進む時期にきたのではないかと考えております。まだ「MotionBoard」に取り込めていないERP基幹システムにあるデータも含めて、全社の様々な生産データ、在庫データ、発注データ、経理データなどを取り込み、より包括的にDXを進めていきたいと思っております。そして、将来予測、原因分析・究明、問題の未然防止強化につなげていきたいと考えております。
さらに昨年よりウイングアーク1st社のデータウェアハウス製品「Dr.Sum」を導入しました。本年は本格的に運用を開始するつもりです。
文雅科信息技术（上海）有限公司
董事・総経理 朱磊氏
ー「MotionBoard」と「Dr. Sum」の関係は。
朱氏：「MotionBoard」自身の計算速度はとても速いのですが、データ量が多くなると計算速度を維持するためには、データを取り込み、保管する別のソフトウェアを導入することが必要となってきます。また、他のシステムにあるデータも取り込み、集積することにより、より拡張性のあるシステムとなります。それを可能にするのが、弊社のデータウェアハウス製品「Dr.Sum」です。「Dr.Sum」は様々なシステムからデータを取り込むことができる一方、その元データを安全に保管でき、システム間を横断した分析が簡単にできるというメリットがあります。
大久保氏：弊社では、運用を全社的に実施していくためにITプロジェクトチームを横断的につくりました。生産、経理、営業、総務も巻き込んでいき、生産工程の可視化・自動化、ペーパーレス化、営業／生産部門の連携強化などにより、さらなる業務そして経営の効率化に役立っていくのではと考えております。
プロジェクトチームを作ることのメリットは会社全体で同じ方向に向かっていくという意識付けができることだと思います。これまでのやり方だけだと、製品によって運用におけるばらつきができてしまい、全体としての効率化が進まないという弊害があったと思います。「MotionBoard」と「Dr.Sum」を連携して運用していくことにより、より利益のでる、筋肉質な会社に変革していくことを最終的には実現できるのではと思っています。
朱氏：中国企業はサプライヤー企業に速いレスポンスを求めます。EVメーカー企業に食い込むためには、営業と生産の連携そして、迅速な返答が必要となります。Knowledge型AIを使用すると、営業ツールも自動的に、瞬時にアップデートできるようになりますので、営業スタッフも資料作成に時間を費やす必要がなく、顧客訪問に時間をさけるようにできると思います。
大久保氏：住友ベークライトグループは全世界で現場改善を実践しております。また年に一度、現場改善発表会を開催しており、優秀な現場改善については表彰されるシステムがあります。弊社は、現在進めているDXによる現場改善を来年の全世界大会に提出したいと考えていますが、是非念願の全世界一位を獲得したいと思っています。
また、世界経済フォーラム（World Economic Forum）は、世界の工場の中から各国企業のお手本となるような工場を選定・認定をしており、これを受賞した最先端工場を「グローバルライトハウス」と呼んでいます。選定においては、「自動化による生産効率工場」「人材育成や働き方」「企業や業界の持続可能性」「社会や環境へのインパクト」といった広範な観点から選定がおこなわれます。これまで全世界で約90工場が認定されていますが、そのうち中国からは29工場が認定されています。
弊社でこれまで取り組んできた「環境・カーボンニュートラル対策」「人材育成・働き方改革」「工場の自動化、サステナビリティ」は、世界経済フォーラムの推奨するグローバルライトハウスにとてもマッチしており、是非弊社は、この認証を取得することを一つの目標にしたいと考えております。
朱氏：貴社が「現場改善ナンバーワン獲得」ならびに「グローバルライトハウス認証取得」を目標としていることは、本当に素晴らしいことだと思います。弊社もこれまで培った知見をもとに、是非貴社の目標実現に向けて協力させていただきたいと思います。
[南通住友ベークライト 南通住友电木有限公司]
住所：江蘇省南通市経済技術開発区港口工業3区通達路81号
[ウイングアーク上海 文雅科信息技术（上海）有限公司]
住所：上海市徐匯区漕宝路33号徐匯日月光中心D棟707室
電話：021-3419-7890（李 日本語可）
URL：www.wingarc.com.cn
Mail：info@wingarc.cn
※インタビュー及び提供資料に基づく情報はすべて取材対象者に由来しており、本誌がこれらの情報の正確性と完全性について、保証するものではありません。
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