

中学高校時代担任でもありテニス部顧問でもあった先生の退任パーティーに参加するべく、週末に一泊二日で日本へ一時帰国した。
Y先生は65歳。23歳から実に43年の教師生活を終えた。
退任パーティーは、テニス部のOBがサプライズ的に開催。結果、先生は大泣き、OB達も貰い泣きで、男だけで数十名がレストランで泣いて笑って、とても良い会だった(男子校なので)。
それにしても改めて今回、OB会の良さを味わえた。
全員が、青春時代の大部分の時間を、テニスで日本一を目指すために、死ぬほど走った苦しさを共有する同志。年齢は最大で50歳以上離れていても、同じ苦しみや喜びを共有した仲間。絶対的かつ、圧倒的な共感の時間を味わった戦友。
テニス部という「組織」に属したわずか6年間が、自分が思っている以上に自分の生きる上での背骨のようなものになっているんだな、と今更ながら感じた次第。
同時に、50年以上続くテニス部(全国優勝3回)が、なぜ熱量が下がらず強い部でい続けられるのかと考えた。
今回はそんなお話。
■共感力
企業組織に身を置く人であれば、本来ならば「ビジョンや理念」に対して強く共感があるのは大前提の筈だ。
しかし本心からビジョンや理念に共感できている人はいるのだろうか?
大抵の場合、書かれたビジョンや理念は読める。知っている。意味は分かる。大事だと思う。了解できる…。それは共感ではなく同意だ。共感は次元が違う。明らかに同意のレベルを越える。
共感とは、自分の実体験を基に、自分の言葉で自社のビジョンや理念について語ることができる状態を言う。
ちなみに母校のテニスコートには「テニスと思うな、人生と思え」と書かれた馬鹿でかい横断幕がある。
この「理念(標語)」をOB達が暗記する必要がないのは、自分の身体の一部だからだ。
身体の一部というのは、この理念(標語)をテーマに、少なくとも30分。何なら2時間くらいは、原稿を書かずに講演できる自信がある感覚だ。しかも頼まれなくても話したい(アウトプットしたい)という情熱のようなものまで含まれている感覚だ。
今回のOB会では、この感覚を持つ集団感、熱量感を強く感じた。
さて、このテニス部と同じように、自社の組織でも何十代にもわたり、強く共感を持ち続ける事は不可能なのだろうか?
勿論、可能だ(某企業様向けに「企業哲学醸成プログラム」なども推進中だ)。このプログラムのコアな部分は「原体験」を探るということだ。
ビジョンや理念など、抽象度の高い内容に対する深い共感は、自分の原体験との関係を見つけ出すところから始める。それは企業の創業者の幼少期を想像しながら、立場を自分に置き換えて思考するプログラムだ。
ビジョンや理念などを壁に貼ることも良い方法の一つだ。テニス部の横断幕がそれだ。ただし、横断幕があっても、その場で実感できなければ意味はない。「テニスと思うな、人生と思え」と、熱いメッセージの前で、”お遊びテニス”をやっていたら、その標語の意味はなくなり、信用を無くす。
故に壁に貼ることは、意識を向け、そこに書かれている事を実感、共感できるような日常的なマネジメントが重要となるのだ。
また上位者、年配者は、成功も失敗も共に感じてあげる(共感)が大切だ。余計な自慢話は不要だ。これも「言うは易し、行うは難し」だ。
組織の中に、様々な種類の共感が溢れている状態になるのは、別に難しい事ではない。難しいのは、そうしたいと強く心から思えないことだ。
■モチベーションは必要なのか?
「従業員のモチベーションを高めたい」というご要望は、とても良く分かるが、一方で「モチベーションが高くないと機能しない組織で良いのか?」という別の角度の問いもある。
別にモチベーションが低い方が良いというのではない。
モチベーションに関係なく、一定以上の成果や品質が出せる状態を目指すべきであり、必ずしもモチベーションを上げることが命題になるわけではないのだ。
第一、単発的なモチベーションではなく継続性が求められるわけで、そうなると当然、構造や仕組みが必要となる。
その根源にあたるのが「JD(職務記述書)」だ。
ここを疎かにしたままの企業(人事)は要注意だ。その機能の役割も曖昧になっているはずだ。勿論JDが有れば良い訳ではない。そのJDを基にして質の高い目標が立てられるかどうか、であり、実はここがポイントなのだ。
本気でモチベーションを上げたい、しかも短期的にも、継続的にも上げたいならば、一度JD診断という手段もある。
テニス部が創部50年を越えてなお、日本一を目指し続けられるか。それはOB達が、テニスの指導だけではなく、人生の先輩として、圧倒的な共感を基に語り合う場があるからだ。すでに息子が後輩になっているOBも多い。こうして組織は永続するのだ。
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