
「ここは、本当に上海なのだろうか?」。上海で開催された世界フィギュアスケート選手権を取材していると、常にこのような錯覚に陥っていた。会場のスタンドは、ほとんど日本の国旗で埋め尽くされ、記者室に座っているのはほとんどが日本人記者、出場選手の中でも日本人選手の数が最も多く、会場のいたるところに日本企業の広告が掲げられている。この様子を見れば、日本人のフィギュアスケートへの情熱は世界1だと認めざるを得ない。だが、日本最北に位置する北海道でも中国の東北地域に比べると寒くない日本で、なぜフィギュアスケートがこんなにも人気があるのだろうか?この問いの答えを探るべく、世界フィギュアスケート選手権の期間中、日本人記者に取材を行ったところ、いくつかの答えが見つかった。
日本人は上海をホームリンクに変貌させた

上海を訪れる前、日本のフィギュアスケートファン1000人が上海に到着したという話を聞いた。その時、1万8000人の収容人数を誇る上海オリエンタルスポーツセンターの「海上王冠」体育館の中では、1000人の日本人観客はおそらく埋もれてしまうだろうと思った。
しかし、会場に着いて試合が始まると1000人のファンの力を過小評価していたことに気付かされた。世界フィギュアスケート大会の期間中、これらの日本人ファンは会場の最もいい席を占拠していた。さらにファンたちはマナーが良く、よく訓練されていて、応援のための準備も万端に整えていた。毎回日本人選手がリンクに登場するたびに、手に持った日本国旗を振ったり、応援パネルを掲げたり、その度に会場はまるで日本人観客で埋め尽くされているように感じた。
会場のスタンドだけでなく、プレスセンターでも、ほぼ日本人の天下だった。本来なら、100年の歴史を持つ世界フィギュアスケート選手権を初めて自国で開催した中国のメディアが同大会に注目するはずなのだが、上海に着いてみると、中央メディアや上海の現地メディアを除き、ほとんどの地方メディアが同大会に全く関心を持っていないことがわかった。これに反し、日本メディアは、ほぼすべての大手メディアが取材のために記者を派遣しており、プレスセンターでも日本人記者が最も多かった。
日本のフィギュアスケート界で次々とスター選手が輩出されるわけ

なぜ日本人記者やフィギュアスケートファンはわざわざ海を渡って、上海で開催された世界フィギュアスケート選手権を見に来たのか?
その答えは、世界フィギュア選手権に多くの日本人フィギュアスケート選手が出場していたからだ。今回の選手権で最も高い人気を誇った日本人の羽生結弦選手のほかに、どの部門にも日本人選手が数人ずつ出場していた。今回の世界フィギュア選手権における日本全体の成績はあまり良くなかったが、羽生選手が男子シングルで銀メダル、宮原知子選手が女子シングルで銀メダルを獲得したことは、日本のフィギュアスケートの強さを証明している。また、最近開催された国際大会でも、日本はほぼ毎回金メダルを獲得しており、その実力は非常に高い。
日本でフィギュアスケートの人材が数多く輩出される要因について、日本のフィギュアスケート界のドンと言われる城田憲子氏は、「我々は、優秀な選手を輩出する専門的な工場を持っている」と語っている。いわゆる工場とは、日本スケート連盟が主催している専門の新人発掘および強化合宿のことを指す。毎年、全国から厳正な審査により選んだ8歳から12歳の子供たちを集めて集中的な強化合宿を行い、瞬発力や持久力、柔軟性、音に対する感覚器官の感度や表現力など、総合的な要素から資質を評価する。優秀な若手人材を発掘すると、幼い頃から国際大会に出場するように育成し、経験を積ませる。また、試合で出会った外国人ライバルと友人になることで、国際大会の中で思いのままに実力を発揮させる。国際大会の中で優れた表現力を見せるジュニアの選手たちの存在はシニアの選手たちに刺激を与え、競争心を促し、互の実力を高め合う関係を構築させる。
さらに、日本スケート連盟は世界大会で金メダルを取るために資金を惜しみなく使っている。連盟は選手を世界的なトップコーチ兼振付師の下に送り込み、直接的な指導を受けさせるほか、試合衣装のデザインを世界的に有名なファッションデザイナーに依頼している。
国際スケート連盟のスポンサー企業11社のうち、8社が日本企業

日本におけるフィギュアスケートの人気の高さやレベルの高い選手が次々と登場する要因は、日本のフィギュアスケートの普及と関係性がある。
中国におけるフィギュアスケート人口は非常に少ない上、基本的には黒竜江などの北方の省・都市に集中している。しかし、日本の事情は異なる。日本で最も寒い地域は中国の東北地域ほど寒くはないが、日本には室内のスケートリンクが非常にたくさんある。炎天下の夏であっても、いつでもスケートができる場所を見つけることができる。多くの南方出身の人がスケートシューズを履いてスケートをした経験がない中国の事情とは大きく異なっている。
スケート人口が多く、普及度が高い日本では、フィギュアスケートはおのずと高い注目を集める。テレビで生中継されるスポーツの中でも、フィギュアスケートは一貫して日本国民が最も好むスポーツ番組の1つとなっている。フィギュアスケート選手はスタイルが良いだけでなく、見た目も美しく、メダルを獲得したスケート選手は日本ではアイドル並みの人気を誇る。
このように、日本ではフィギュアスケートの人気が非常に高いことから、日本企業も積極的にフィギュアスケート大会のスポンサー企業に名乗りを上げている。国際スケート連盟のスポンサー企業11社のうち、現在8社が日本企業だ。今回、上海で開催された世界フィギュアスケート選手権のスポンサー企業もほとんどが日本企業だった。このため日本ではフィギュアスケートは最も潤沢な資金を誇るスポーツの一つとなっている。
エピソード
クマのプーさんの雨
2015年世界フィギュアスケート選手権男子シングル・ショートプログラム(SP)の競技で27日、日本の羽生結弦選手は首位に立っていた。彼の競技後、競技場は「クマのプーさんの雨」に見舞われ、独特の風景を見せた。
羽生結弦選手のSPの音楽はショパンのピアノ曲で、演技終了後、観客たちは持参したぬいぐるみをリングに向けて投げ込み、応援した。ぬいぐるみの多くのは羽生選手が好きなクマのプーさんで、羽生選手はリングを出る前に、その中の1つを拾って抱き上げた。
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