

日本の春ドラマで、「ダークホース」となった「重版出来!」は、松田奈緒子による漫画を原作とし、新人女性漫画編集者・黒沢心を主人公に、漫画家を支える編集者の仕事を描いている。その元気良さと画面からあふれんばかりのプラスのエネルギーで、決して景気がいいとは言えない出版業界にスポットを当て、中国の情報コミュニティサイト・豆瓣では、今年の日本ドラマとしては最高の9.1ポイントを獲得している。
「重版出来!」はコミカルで新人を励ますだけのドラマと言う人は、脚本の能力を過小評価している。同ドラマは、リラックスして見ることのできるタイプだが、その中では、出版業界の抱えている課題や生き残りが難しい現状が至る所で伝えられている。
このドラマについて語る前にまず、「重版出来(じゅうはんしゅったい)」というタイトルの意味について説明しよう。出版業界では、本屋に並んでいる書物の最初の版のことを「初版」と呼ぶ。作品によって、初版を使った発行部数も異なる。実績のある人気作家の作品なら、初版で数万冊発行される。一方、新人作家の場合、初版でたくさんの部数が発行されることはあまりない。初版が完売となると、出版社は初版と同じ版を使い、増刷・重刷し、その書籍が販売されることを「重版出来」という。増刷・重刷されるということは、その書籍がよく売れているということで、出版社の編集部にとってはうれしいこととなる。「重版出来」という言葉は、出版業者が最も好む言葉で、全ての漫画編集者の目標。それがこのドラマの中心となっているテーマだ。

紙媒体市場が日ごとに縮小しているのを背景に、漫画業界も大きな打撃を受けており、同ドラマでは、「作家の初心」や「業界の改革」もテーマとなっている。昔人気だった漫画家は過去のような気概が見られず、新人漫画家は自信がない。ドラマの中では、編集者が電子書籍を持って、漫画家に電子版の漫画の機能を説明するシーンもたくさんある。ある回では、10年間漫画家を目指し続けているアシスタントが、新人漫画家の才能に驚き、自分の夢をあきらめ、実家に戻り家業の酒屋を継ぐ。あきらめることや第二の人生を始めることが、人生において必要な時もあるということも分かるが、漫画業界の競争の激しさも側面から描いている。
社会の中で、小さな個人が必死に努力し、生き残るために奮闘する姿は、同ドラマにおいてフレッシュな見所だ。社会の見通しは明るくなくとも、多くの人が自分の未来をこじ開けようと必死になっている。「生涯一つのことだけをし、それを極める」というのが、多くの職人の座右の銘。日本のカリスマ鮨職人・小野二郎さんも、昼も夜もすしを握り続けており、生涯鮨職人だ。
「重版出来」の中で、書籍の前では誰もが平等であるという信念を持つ田舎の本屋の店長や、自分の好きな漫画家の新作が売れるようにとネタばれは絶対に見ない本屋の店員などは皆、この業界の守り神。彼らの心がこもっているからこそ、その思いは月並みではない。
おススメ
【懸念】ピカチュウが軍事機密を漏えい?画像アップで漏洩の可能性
【美景】アニメは架空の物語とはかぎらない モデルになった場所を総まとめ
本微信号内容均为人民网日文版独家稿件,转载请标注出处。


