
女優・松たか子主演の火曜ドラマ「カルテット」は、第5話以降、視聴率が下降傾向になり、「敗退」ムードを漂わせている。
しかし、人気の度合いを測るこの視聴率を、
ヒットメーカーである同ドラマの脚本家・坂元裕二は全く気にしていない。

同ドラマはのびのびと自由に製作されており、弦楽器奏者の4人がカルテットを組み、軽井沢で共同生活を送りながら弦楽四重奏をするというのがそのストーリー。人気女優の松たか子にとって、連続ドラマ出演は2012年に放送された日曜劇場「運命の人」以来約5年ぶりで、ありきたりなストーリーはもう眼中にないようだ。残りの3人の満島ひかり、松田龍平、高橋一生も日本の芸能界では演技派俳優として知られ、皆主役を演じる実力を誇る。実際には「勝ち組」であるこの4人が、このドラマでは「負け組」を演じており、そのギャップが非常に面白い。

日本のドラマの脚本家で、視聴率を気にしなくてもいいほどの一流脚本家には、坂元裕二のほかに、個性豊かな宮藤官九郎や映画作品が多い三谷幸喜がいる。昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」の視聴率は平凡なものだったが、三谷幸喜はそれでも「第91回ザ・テレビジョン ドラマアカデミー賞」の脚本賞を受賞した。坂元裕二は、昨年の月9「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の視聴率が全く伸びず、「問題のあるレストラン」(15年)やドラマファンの間では話題作となった「最高の離婚」(13年)も、視聴率でその内容を判断する作品ではない。
傑作の映画が絶対に爆発的な興行収入を記録するわけではないのと同じく、日本のドラマの賞の受賞と視聴率は全く別物で、それが結びつけられるわけではなく、とても公平な環境となっている。

「カルテット」の良さは、その精妙で繊細な手法にあり、ありがちな人物設定をせずに、マニアック路線を歩んでいる点にあるのかもしれない。
そのストーリーは全10話しかないにもかかわらず、2幕に分かれている。
第一幕では、主要キャラクター4人が、謎に満ちた過去と誰にも言えない目的を持って、4話に分けて登場する。
一方、第二幕に入ると、すぐにサスペンスのムードが漂うようになり、意外なゲストもたくさん登場する。例えば、巻真紀(松たか子)の夫・巻幹生役で宮藤官九郎が登場する。もともとセリフの中で存在している人物をあえて真正面から描くところから、坂元裕二の破天荒さが垣間見える。
このような演出は、坂元裕二の作風に慣れた本当のファンにしか受け入れられないのかもしれない。そのようなファンがドラマを見るのはレクリエーションのためではなく、何かを追求したり、探求したり、思考を働かたりするためで、脚本家と切磋琢磨し、脚本家を自分の魂のパートナーにするというのが真の目的だ。そのようなマニアックな視点に、多くの視聴者はついて行くことができないものの、視聴率が低いほどマニアックという世の流れにマッチしている。特定のグループの志向に合わせた作品を作るというのは、坂元祐二のような一流脚本家にしかできない技だろう。
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