
国慶節(建国記念日、10月1日)のゴールデンウィークを迎えると毎年、「中国人観光客はマナーが悪い」との報道が沸き起こる。だが結論ありきで間違ったニュースを伝えているメディアも少なくない。
ここ数日、「中国人の老人が日本で『当たり屋』行為をしたと言われている」とのニュースがネットで大きな話題となった。中国人観光客の老人が京都で「当たり屋」をして10万円を要求したという知らせについて、当事者の老人がツアーに参加した厦門の旅行社の複数の職員は、老人が日本で「当たり屋」をしたという事実を否定し、この老人は実際に足に傷を負い、日本側の車の主も老人にぶつかったことを認めていると証言している。また最初に「当たり屋」を見出しにこれを報道した中国語メディアの記者も、文章が誤解を招いたとして謝罪した。
□事件報道の経過
10月4日

「微博」(中国版ツイッター)上に日本語の文書が掲載され、話題を集め出した。今年8月、ある中国人の老人が日本で「当たり屋」行為をして10万円を要求したというのである。これに対し、地域の住民団体は張り紙を出し、「当たり屋」行為にひっかからないように注意し、もしもこのような行為に遭ったら警察に届けるようにと呼びかけたという。

10月5日

フェニックステレビの記者が、「京都祗園町南側地区まちづくり協議会」の高安美三子会長と村上茂防犯防災委員長の話を引用して、「京都で『当たり屋』があったのは事実だ」と報道した。
10月6日午後

当事者である老人が参加したツアーの引率者の劉さんが、老人が日本で「当たり屋」行為をしたとの報道は事実でないと否定した。
これによると今年8月、当事者である老人の娘の楊さんと夫、子ども、両親の一家5人は、6日間の日程の日本ツアーに参加した。事故が起こった時、楊さんの母親は道ばたで写真を撮っていた。この時、道を走っていた車両の女性ドライバーが通行人を避けようとして、母親のかかとにぶつかってしまったのだという。
楊さんによると、彼らはすぐに警察に届けた。警察では調書を取り、楊さんの母親に運転手の責任を追及するかを聞いた。だが老人は、ドライバーは責任を逃れようとしたわけでもないのでいいと断った。警察はその場を去り、老人側とドライバーが自分で問題を解決することとなった。
なぜ10万円を求めたかについて、楊さんは、日本人ドライバー側は保険会社を通じて賠償しようとしたが、保険申請の過程には非常に時間がかかる上、日本での日程も限られているため、早く帰国するためにも、双方はまず先に払い、保険の問題は日本人ドライバーの方で解決することにしたと説明している。楊さんによると、どのくらいの額がふさわしいのかわからなかったので、ツアー参加費の7400元を求め、最後はドライバーと交渉して10万円(5300元)の賠償で決着をつけることになった。
楊さんによると、女性ドライバーは異議を出さなかったし、楊さんも家族も脅すなどはしておらず、逆にこのドライバーは責任感があると感心していたのだという。
10月6日深夜

京都祗園町南側地区まちづくり協議会が「お詫びと訂正」を出し、最初の日本語の通知書に事実と異なる点があったとして、心からの謝罪を表明し、関係者を処分するとの立場を明らかにした。
□いかにこれを考えるか
小さな事件にも見えるが、中国のイメージに対するダメージは大きい。国内の一部のメディアの報道とコメントが日本に伝わると、中国に泥を塗ることを好む一部の日本のメディアやフォーラムに新鮮な話のタネを与えることになり、日本のネット空間には罵倒の声があふれた。
真相が明らかになった今も、間違った報道による悪影響は取り除き難く残っている。日本語版のヤフーで関連する話題を検索すると、「中国人観光客が京都で『当たり屋』をした」との多くのメディアの数日前の報道が残っている。一方、祗園町南側地区まちづくり協議会が6日に出した謝罪文についてはほとんど報道がない。
正確で客観的であるべき専門メディアが、事実とまったく異なる報道をしてメンツを失ってしまうのはなぜだろうか。重要な原因の一つは、毎年国慶節のゴールデンウィークになると「中国人観光客のマナーが悪い」という報道があふれるため、一部のメディアは先に結論を決めてしまって、それに合ったネタを探しにいくという態度を取っているためと考えられる。ネット上に「中国人の老人が京都で『当たり屋』をした」との手がかりが見つかると、一部のメディア人は、注目を集めるネタが見つかったとこれをすぐに報道し、必要な裏付けを取るのを怠る。このようなプロ意識を欠いた報道は、メディアの信用を傷付け、中国の国家イメージの汚点を作り出してしまうのである。
そうしたプロとしての反省のほかにも、注意を払うべきなのは、複雑な国際世論環境を背景に、メディアは、中国にかかわる論争を呼ぶ話題についてはっきりとした意識を保ち、世論はソフトパワーの力比べの一端を担っているとの認識を持たなければならないということである。周知の通り、国外の個人やメディアの一部は中国に偏見を持っており、中国の問題に対する彼らの視点は客観的なものとは限らない。もしも我々自身のメディアが独立した思考を放棄し、海外の世論と一緒になって騒いでしまえば、中国のイメージに泥を塗る世論の合唱に加わり、彼らに利用されることにもなり得る。
一部の日本人や一部の日本メディアは、中国のネガティブなニュースを好む。その原因は複雑だ。日本を旅行する中国人観光客の増加は、日本の低迷する消費を盛り上げてはいる。だが中国が発展しているのを、また見下していた中国人が日本で大金を使っているのを快く思っていない日本人もいる。そのため一部の日本メディアは中国人観光客のネガティブなニュースを好んで取り上げ、中国に泥を塗ることによって心理的な優越感にひたり、中国を牽制し包囲しようとする勢力にエールを送っているのである。このような複雑な現実に対し、中国メディアははっきりとした認識を持たなければならず、簡単に影響されることを避けなければならない。
中国人観光客が確かに持っている欠点について、メディアが改善を呼びかけるのに問題があるのではない。だが中国メディアは、日本メディアの立場に反省もなく従っていてはならず、中国のスキャンダルを喜ぶような態度を取るべきではない。特に主流メディアには、国家イメージにかかわる報道についてのより一層の慎重さが求められる。祗園南側地区まちづくり協議会はすでに謝罪文を出している。だが謝罪をすべきなのは、根拠を欠いた話を通知した協議会だけではない。これに飛びついて一斉に報道を行ったメディアにも謝罪の責任はある。
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