
雑貨輸入商を営んでいる井之頭五郎にとって、一番の楽しみは、仕事の合間に立ち寄った大衆食堂系の店で、一人でひたすら食事をする。このようなシーンが20分続く。
味気なく聞こえるかもしれないが、この刺激がほとんどない日本の深夜ドラマ 「孤独のグルメ」は、放送が始まるとすぐに高視聴率を記録するようになり、シーズン3で終わる予定だったものの、視聴者の強い要望もあり、今年の4月からシーズン6の放送が始まった。製作費は一話当たり約480万円。登場する店は全て実在する店をモデルにしている。普通に考えると、その店がある地域以外に住む人が見ても、あまり魅力を感じることはない。しかし、中国の動画共有サイトでは、「みんなのお気に入りは、料理ではなく、食事をしているおじさんを見ること」、「あのおじさんが一人で食事をしている様子に夢中になってしまう」などのコメントが寄せられている。
「一人で食事」の醍醐味は誰にも邪魔されることなく没頭できること
一人で食事をするといっても、一人の時間を探し、それを楽しむというレベルに至るまでには長い時間がかかる。一瞬で大ヒットしたドラマ版「孤独のグルメ」と比べると、その漫画版が注目されるまでには長い時間がかかった。原作・久住昌之、作画・谷口ジローによる漫画である「孤独のグルメ」は扶桑社の「月刊PANJA」誌上で1994年から連載が始まり96年に終了。文庫版も1冊刊行されただけで、2008年になって「SPA!」に読み切りとして復活し、以後「SPA!」上で不定期に新作が掲載されるようになった。そして、12年からテレビドラマシリーズ化され、俳優の松重豊がはまり役となったことで、井之頭五郎が「食事をしている様子を毎日見ていても飽きない」おじさんになった。

正直言って、おじさんが料理をしている姿なら、魅力あるというのも納得でき、それなりの格好をして、ある程度の腕前を見せることができれば、ポイントも高まる。しかし、おいしそうに食べる姿で人を魅了するというのは、かなりの至難の業だ。しかし、松重豊はそれをやってのけ、一人でする食事を、楽しみを感じる恒例の時間にしてしまった。立ち並ぶ飲食店の前に立ってじっくり考え、その中から1軒を選んで入り、メニューに2、3回目を通してから、注文する料理を慎重に選ぶ。それがおいしかった時は、心の中で大喜びし、注文しすぎたり、組み合わせを間違えた場合はがっかりして肩を落とす。また、隣の人が何を食べているかをこっそり見て、「しまった!あれもおいしそうだ!食べたいなぁ!」と心の中でつぶやく。このドラマの見所は、食事をしているだけに見えるおじさんの、感情豊かな表現だ。
「孤独のグルメ」 は中国版も製作された。舞台となったのはほとんどが屋台のB級グルメが人気の中国台湾で、主演を務めたのもおじさん俳優の代表ともいえる趙文瑄(ウィンストン・チャオ)だった。しかし、中国語版のドラマは好評を博することはできなかった。その主な理由は、井之頭五郎を演じたウィンストン・チャオが単なる台湾地区のグルメ番組のリポーターのようだったからだ。毎回、「この店とても有名なんだよ」と言って、料理を注文し、「やっぱりおいしいね」と言いながら食事をし、お金を払って帰るというのがお決まりのパターンだった。どんなにおいしい料理でも、それを一気に平らげ、すぐに次の店に行くというなら、台湾地区の名物B級グルメを紹介する番組と変わらないのではないだろうか。誰にも邪魔されずに、食べることに完全に没頭している雰囲気が全くなく、「一人で食事をする」醍醐味が完全に消えてしまっていた。
井之頭五郎が一人でひたすら食事をする姿は、「時間や社会に束縛されることなく、ゆっくりとお腹を満たし、その時間だけは自分の好きな事だけをし、誰にも邪魔されることなく、『自由』を楽しみ、全てのストレスから解放されてただひたすら食べるという時間こそ、現代人に平等に与えられた最高のいやしの時間」ということを悟らせてくれる。
そのような時、「孤独」を「楽しむ」ことができる。つまり、一人で食事をするというのは、癒しが得られる時間なのだ。(次回につづく)(文匯報掲載)
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